建築コラム
森にくらす家
「木の家だから和風」とは限らない。これまでの生き方を映した夫婦二人で愉しむ終の棲家。
二人の希望がカタチとなった、フレンチカントリーと大きなテラス。
数年に迫ったリタイヤを前に「夫婦二人で愉しむ家を建てたい」と考えられていたF様ご夫妻。じっくりと腰を据えて終の棲家づくりに取り組む中で出会ったのが黒川設計士でした。国内外の住宅雑誌の切抜きを集め、長年住まいのアイデアを温めて来られた奥様にとって、理想の家はある程度思い浮かんでいました。ところがある時、それを実現するためにはハウスメーカーのシステム化されたプランや工務店の一貫設計施工は大きな障害になると気付いたといいます。
「誰の都合にも縛られず、思い描いた住まいを建てたい・・。」
琵琶湖近くに土地を見つけたことをきっかけに、地元の黒川設計士の作品群をホームページで見たのが出会いだったといいます。
「とにかく、よく話を聞いて下さったのです。こちらも要望を全てお伝えし、全体像を分かっていただけたと感じたところから、あとの細かなところは全て安心してお任せ出来ました。」と奥様。
奥様の長年の夢だったフレンチカントリースタイルの住まいに、深い庇を備えた大きなテラスを希望されたのはご主人です。ホーロー製キッチンは奥様たっての要望。サッシは国産とアメリカ製が適所に使い分けられるなど、希望する異なったメーカーを自在に取入れられるのも、設計士が主導する家づくりならではと言えます。
高島で育った木で、高島に家を建てる。その安心感とリーズナブルさが魅力。
「県産の木を使って家を建てることについて初めはそれほど意識していませんでした。きっかけは黒川さんから制度についての説明を受けたことです。助成金により建築費が抑えられ、その分をほかに活かせることは勿論ですが、何より魅力だったのは、その地域で育った木で家を建てるのが一番いいと昔から言われていることです。大手のハウスメーカーさんだと、どこで育った木なのか、どういう経路で運ばれて来るかも知らないまま住む事になります。木材の地産地消は大きな決め手となりました。」
会の岡本木材㈱からは、住宅のメイン柱は当初は18cm角の予定でしたが、より見栄えのする21cm角の柱へ同予算のまま融通してもらう事も出来ました。堂々とした柱はリビングで一際大きな存在感を放っています。
二人がお互いを感じながらゆっくり過ごせるようにワンルーム空間とした間取り、その中心に鎮座する薪ストーブも奥様の長年の夢だったそうです。そこへ最初に焚かれる薪は、元々敷地に生えていた木です。工事途中に会のメンバーと一緒にワイワイと薪割まで楽しみました。
雪が降る高島の地でこの薪が、ご夫婦と住まいづくりに携わった一人ひとりの絆を温め、その思いがやがては家への愛着へと育って行くことでしょう。